*文字サイズの変更にjavascriptを使用
*動作確認IE6,7
Junk
貴族探偵エドワード
大国アングレの首都、ロンドラ……。
その広大な都市の南の外れにあるフォックス通り25番地。
コツ、コツ、コツ……と堅い木の床を鳴らす、静かで規則的な靴音。
ギィッと鳴る、寝室のドア。
カーテンを勢い良く開ける時の、シャッと言う音。
そして。
「エドワード様!お起きになってください!」
『シーヴァさんは大変そうだな』
『笑っちゃダメだよ、』
とは瓜二つの顔を見合わせ、笑いあった。
「おはよ、二人とも」
『おはよ、トーヤ』
『シーヴァさんの声、こっちまで筒抜けだよ』
互いに窓を開け、そこで3人は会話をする。
バルフォア校ではオーク寮とエルム寮に分かれていたのだが、トーヤ、、は同じ学び舎で生活していた。
もっとも正式な理由無しで中退したトーヤとは違い、とは父親の赴任先が変わったので学校を辞めた。
トーヤがグラッドストーン探偵事務所に転がり込んだその日。
”助手見習いの採用試験”と称した、トーヤの身の回りの物を揃えに行った先の中古家具屋で3人は再会を果たした。
旧友との再会ということで話は弾み、トーヤがたちに今の家の住所を尋ねると。
『まさかエドワード先輩がお隣さんなんて、僕知らなかった』
『は滅多に外に出ないからな』
双子として生まれたはずなのに、兄のは病気がちで華奢で外出することなど稀である。
反対に弟のは健康体で、外で活発に遊びまわり、体格もを上回る。
外見だけを見ると、が兄でが弟のようだ。
はトーヤよりも更に小柄で、ともすれば少女に見間違えられることもあるくらいだった。
そのせいもあってか、はを常に家の中に居させたがる。
今は法律で禁じられたとはいえ、昔はアングレでも人身売買があった。
そんな闇の中で生きる人間たちには、は上玉として見られるのである。
「やぁ、、おはよう」
『おはようございます、先輩。おはようございます、シーヴァさん』
首都近郊の領主の家柄で、上流階級の出でもあると。
しかしはシーヴァや他の使用人、領民たちにも常に礼儀正しい。
年長者を敬い、同年代のものにもきさくに、そして丁寧に接する。
そのことが、がバルフォア校で同級生たちに軽視される理由となった。
しかしが人望が厚かったため、は決して虐められることは無かった。
ちなみにはエドワードの当番生であり、エドワードに可愛がられていたのも、が虐められなかった理由の一つである。
「おはようございます、様、様」
『おはよ、シーヴァさん』
も程ではないが、使用人などに対しても礼儀正しい少年である。
何分下町好みなため、ロンドラの安アパートにと共に移り住んで暮らしている。
『なぁトーヤ。今日は仕事何かあるのか?』
「え?エドワード、ある?」
トーヤはすぐ傍のエドワードに尋ねる。
「いや、今日は依頼は入ってない」
「だって」
エドワードの言葉をトーヤが受け継ぎ、答える。
『じゃあうちに来ないか?オレンジぺコの茶葉が手に入ってさ。にクッキーでも作ってもらって……』
『僕?』
『うん。だっての作る料理とお菓子、俺好きだもん』
可愛い弟にそう言われては、もまぁしょうがないな、と思う。
「私もお手伝いさせていただきます」
『ありがとうございます、シーヴァさん』
シーヴァのありがたい申し出に、はペコリと頭を下げた。
『先輩もいらっしゃいますよね?』
「もちろん、お邪魔させていただくよ」
めくるめく午後のティータイムの、始まりはじまり。
《戻る