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Junk

D.Gray-man




それは偶然で、必然。


「『あ』」
「あ、す、すいません……!」
『いえ……』

きっかけは市場の屋台に並んでいた、赤い林檎。
アレンじゃその林檎と同じくらい赤くなり、はそんなアレンを見て微笑んだ。

(手がほんの少し触れただけなのに……随分と可愛らしいエクソシスト様)

まだ年端も行かぬ少年。
けれど千年伯爵が恐れ、欲する少年。
自分の養父を殺した、悪魔つきのAKUMA祓い。


『林檎……』
「え?」
『どうぞ貴方がお買いなさいな。私はどうしても要るわけではないので』


上からヴェールを被り、下もつま先くらいしか見えないジプシースタイル。
今のは男にも女にも見える。

衣の間から見える肌は白雪。
こちらを真っ直ぐ射抜いてくる瞳はアメジスト。
の隠し切れない艶やかさに、アレンはとりつかれる。


「おーい、アレン〜」
「モヤシ、早く来いよ!」
「は、はい!」


ラビや神田の声に、一瞬アレンの意識がから逸れる。


「え……」


刹那。
の姿はどこにも無かった。


「何やってるんさ?」
「今ここに綺麗な人が居たんですけど……」


ストイックなドレスや洋服を着た群衆の中で、のあの異国風の服装は目立つはず。
けれど、見渡す限りの姿はどこにも無い。


「寝ボケてたんじゃねぇのか?」
「そんなことありませんよ!確かに綺麗なアメジストの瞳をした人が!」
「アメジスト?」


ラビの呟きに、神田とアレンの言い争いが止まる。
二人は今にもイノセンスを発動しそうな勢いであった。


「ラビ、何か知ってるんですか?」
「アメジストの瞳は、預言者の証なんさ」


預言者。
キリスト教において、神の霊感を受け、信託として述べる者。

予見者。
未来を見通す者、そして過去を見直す者。

預言者たちは、預言と予見の両方の力を備えているという。


「でも、預言者はもう絶滅したはずだろ?」


神田の言うとおり、ここ数百年間預言者が存在したという記録は残されていない。
だから教団はこう結論付けた。
預言者は滅んだ、と。
最早預言者はノアの一族同様、伝説の存在と化している。


「でも実際にノアは居るんさ」


ならば、預言者だって今、この世に居るかもしれない。
全てを見通し、全ての結末を知り得る預言者が。


「……なら、向こうに奪われる前に奪わないとな」


神田が不適に笑い。六幻を抜く。
アレンは左手を、ラビは槌を構えて。


「その前に、一人頭10体はAKUMA倒さなきゃいけませんよ?」


四方をAKUMAに囲まれる。
辺りは人間が悲鳴を上げ、逃げ惑い、混乱と化している。


「めんどくせぇ……一気にカタ付けるぞ!!」


神田が地面を蹴りだすと同時に、アレン、ラビも宙を舞った。


『おぉ、相変わらずすげーなアイツら。Lv.2がどんどん死んでく』


エクソシスト対AKUMAが行われている、そのすぐ傍のアパートの屋上。
そこからは戦闘を見物していた。
となりではが何やら苦しそうにしている。


『……っふ、く、……っ!』
『ん?あ、悪りぃ』


が右手を離すと、は思いっきり息を吸う。
先刻アレンの視線が一瞬逸れた際、は後ろから誰かに口を塞がれ、連れ去られたのだ。
他の人間の目に止まらない早業を成し遂げた誰か、というのは当然
は先程までずっとの右手で口を覆われたまま、呼吸を止められていた。


『しっかしちゃんてばアレン誘惑すんなよな』
『何、焼き餅焼いてる……っン!』


唇を塞がれ、舌を舌で絡め取られる。
水音と漏れ出る甘い声が、その場を支配する。


『あんまり可愛くないこと言うと、いますぐこの場で犯すぞ?』
『それは止めて』


ならやりかねない、とは思う。
なんせ、の両親の死体のすぐ横でを犯した男なのだ。
の笑顔が、怖い。


『あ、アレン君林檎踏み潰した……』


rotten apple.
腐った林檎。
イヴが口にして神の怒りをかった、禁断の果実、原罪。


『それにしても神田、だったか?残念だったな。預言者はもう俺たち一族のもんなのに』
『違うよ、。俺はだけのもの、でしょ?』
『……そうだな』


腕の中で艶やかな笑みを浮かべるも笑い、の服の中に手を忍ばせる。


『ちょ、……っ』
『まぁ高みの見物としゃれこもうぜ?』


結局は、まぁ言わずもがなで。


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