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テニスの王子様

『ジロー、何してんの?』
「あ、ちゃんだ〜」
「こらジロー。に飛びつくのやめーや」


忍足はそう言ってちゃんから引き剥がそうとするけど、俺は負けないC〜。
昼休みはちゃんの膝枕で寝るのが俺の楽しみ。
ちゃんはバイオリンとピアノと声楽のために中等部から氷帝に来てて、いつもテストで一番。
ちゃんとはクラスも部活も違うから、一緒に居られるのは休み時間くらいなんだよね。
忍足は3年間ちゃんと同じクラスだから、いつでも一緒に居られてすごくズルい。
ちゃんはみんなのちゃんなんだから!


「ね〜ちゃん、今日はテニス部来てくれる?」
は今日は無理なんやて」
「忍足には聞いてないC〜」


俺はちゃんに聞いたのに、なんで忍足が答えるわけ?
なんかムカつくんだけど。
ちゃんはなんで俺と忍足がにらみあってるのかわかってないみたい。


『何ケンカしてんのさ?今日は立海大に行くことになってるから』
「立海大に?なんで〜」
ちゃんが言うには双子の弟が立海大に居て、立海大の男子テニス部は寮制だから滅多に帰って来ないみたい。
で、今日は弟さんの顔を見に行くんだって。


「え〜俺も行きたいC〜」
『んー、なんかがね…あ、って弟ね…来るなら跡部と来いって言うから』
「なんで跡部は良くて俺はアカンねん」


俺も忍足の言うことと同じ。
なんで跡部は良いわけ?


と跡部は小さい頃からのテニスのライバルなんだ。僕はずっとピアノとかの稽古であんまりの相手してあげられなかったから』


ちゃんは世界的に有名なウィーンの音楽学校でも主席だったみたいで、本当に音楽一色の生活だったみたい。
だからこんなに色も白くて細ちっちゃいのかなぁ?
でもちゃんはそこらへんの女の子よりすっごく可愛いけどね。
これでちゃんがマッチョだったらイヤだ。


『だから跡部の方がのことよく理解してるし……ね』
ちゃん…」


ちゃんは寂しそうに笑う。
いつも優しく笑ってるちゃんは好きだけど、悲しそうな顔をするちゃんは見たくない。


「でも弟クンはのこと嫌いとちゃうやろ?むしろブラコンなんとちゃうか?」
『なんで?』
「よっぽど兄貴のことが好きなんとちゃう限り、兄貴とLOVE定額入るやつなんておらんやろ……」


忍足の言うLOVE定額は、最近CMでよくやってるボーダフォンのサービス。
確かメールも電話もし放題なんだよね。
ちゃんのケータイがボーダフォンなのはアドレス教えて貰ったときに知ったんだけど。
もしかして毎日電話したりメールしたりしてるのって、その弟クンとだったの?


『だってが兄弟で入った方がお得だって』
「せやから、毎日メールするのはおかしいやろ」
『そうなの?日本人は兄弟でメールとか電話するものだってが言ってたけど……』


ちゃんも純粋な日本人なのに、長い間ヨーロッパに居たから日本のことはよくわからないみたい。
3歳から12歳までずっと向こうに居たならしょうがないのかもね。


「あ、そろそろ予鈴鳴るで」
『ほんとだ。ジロー、明日はテニス部見に行くからね』
「ほんと?うれC〜!」


ちゃんは絶対に嘘を付かない。
だから明日は絶対に来てくれる。
ちゃんにすごいって言ってもらうためにも頑張らなきゃね。



















、またケータイ見てんのか?真田キレてるぜぃ」
『じゃあブン太代わりに言い訳しといてくれよ』
「なんで俺が?」
『親友ってのは運命共同体だろ?』


ニヤリと人の悪い笑みを浮かべる姿さえが絵になる。
さすが美人は何をしても決まるよなぁ。


今日はの様子がおかしい。
ケンカをふっかけられても無視するし(いつもは半殺しくらいはする)。
仁王にセクハラされてもどす黒い笑顔だけで済ますし(いつもなら毒舌マシンガントークで徹底的に凹ます)。
ジャッカルなんて今日は全くいじめられなくて逆に脅えてるくらいなんだぜ?


『お、来た!』
「メールかぁ?」
『あぁ』


メールを読んでるうちにの顔がすごく優しい表情になっていく。
なんつーの、あれ?そうそう、慈愛に満ちた笑顔ってヤツ?
今のを例えるならそれしかねーな。
なんか怖ぇー……。


『あ゛?!なんか言ったか?』
「言ってねーよ!」
『ほーぉ、この俺に向かってそんな態度かよ?』
「?!そ、それよりメール彼女とかからかよ?」
『いや、双子の兄貴だけど』


とっさに話を変えて、なんとか生き延びた。
伊達に3年同じクラスじゃねーし、こいつのルームメイトやってねー。
幸村とか柳ほどじゃねーけどの扱いには慣れてる。


「兄貴って、ウチに居たのかよ?」
『んなわけねーだろ。氷帝学園だよ』
「氷帝?あ、芥川と跡部が居るとこか」
『そー。は音楽で氷帝に行ったからな』
「……そいつマジでお前と兄弟なのか?」


意外だけどは音痴だ。
いや歌は上手いけどリコーダーとかピアノとかが全然ダメ。
主要教科と保健体育は5なのに、あとはアヒル(2)の大行進。


は正真正銘の兄貴だよ。お袋に生き写しだから』
「本当にそっくりだな…」


に見せて貰った画像に写ってたのはめちゃくちゃ美人なのおばさんと、その人にそっくりな可愛い子。
マジで可愛くて、男だって言われなきゃ絶対そうとはわかんねー。


「ってかなんでそんな画像持ってんだよ」
『親父に送ってくれって言われたんだよ』


の親父さんは、グランドスラムを果たした伝説のテニスプレーヤー。
今は実家の財閥の会長をやってて世界中を飛び回ってるらしい。


『ま、良いけどな。可愛いし』
「……は?」
『これなんかめちゃくちゃ可愛いだろ』


が自慢そうに見せてきたのは、さっきのって子が真っ赤なバラの花束を抱えてニッコリ笑ってるヤツ。
こんなにたくさんのバラの花束、初めて見たぞ?
でも確かに可愛い……って、頭に被ってるのってベールか?


「ウェディングドレスか?」
『あぁ、伯母さんたちの着せかえ人形にされてたからな』
もか?」
『いや、俺は親父似だから見れたもんじゃないってさ』


でチャイナとかがかなり似合いそうな気がするけど。
言ったら殺されそうな気がするから絶対言わねー。


『あ、校門のとこ着いたってよ』
「え、来んの?」
『あぁ。お前来んなよ』
「は?なんで?」
『これ以上悪い虫付けてたまるかよ』


冗談かと思ったらの目はマジ。
こいつ絶対そのって子が氷帝に行くってなったとき、絶対猛反対したんだろーな。


って、そのって子が初恋だったりする?」
『なんでわかったんだ?』


アッサリ肯定しやがった!


って付いてきたがマジかわいくてさ』
「マジかよ……」


親友の意外な一面を垣間見た瞬間だった。


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