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Junk

テニスの王子様



「キャー、跡部様よ!」
「忍足君に、ジロー君!それに」
「「齋嘉君まで揃ってる〜っ!!」」


女子の黄色い声援の傍を、は静かに通り過ぎる。
一瞬だけ見えたは、いつものように遠い存在に感じられた。


〜、眠いC〜」


芥川がにもたれかかると、忍足が苦笑する。


潰れてまうで、ジロー」
『侑士、大丈夫だよ。あ、はい、約束してたカップケーキ』
「やった〜!!」
「いつもおおきに」


以前、が芥川の為に作ったお菓子の余りを忍足にやったことがある。
その美味さに忍足が味を占めて以来、はよく二人の為に作ってやるようになった。


「ん〜、やっぱ美味いC〜!!」
ってほんま器用やなぁ」
『料理とかの家事は俺の分担だからなだけだよ。プロとなんて比べ物にならないと思うし』


が謙遜してみせると、教室が一気に騒がしくなった。
跡部とが入ってきたからだ。

氷帝学園生徒会長と副会長、テニス部部長とバスケットボール部部長。
そんな肩書きを背負っているたちは、秀でた容姿と中身、カリスマ性を兼ね備えた存在だった。


「あれ、どこ行くの〜?」
『ちょっとね』


こっそりと教室後方のドアから出ていこうとしたが、芥川に見つかってしまう。
とりあえず言い繕う暇も無く、教室を後にする。
たちが自分たちの教室を訪れるたびに、は逃げるようにその場を離れているのだった。

新設されたばかりで普段はあまり使われない新館まで来て、は走るのを止める。
人の気配が全く無いのを確認して、は安心した。

が、怖い。
そう思うようになったのはいつからだったか。
あの何かを見定めるような視線が、を怯えさせていた。
どうして自分なんかを、は食い入るように見つめるのだ?


『なんで逃げんの?』
『っ?!』


未だに息を切らせているとは違い、の肩を掴むは落ち着いた様子でを見つめる。

『離して!』
『俺の視線に気づいてたんだ、さん?』
『なんで、俺の名前……』
、結構有名だよ……なんでか知りたくない?』

を引き寄せ、抱きしめる。
耳で耳の裏を舐め上げられ、はあられもない声を上げる。

『や、ア……っ!』
『ヤりたい男No.1なんだよ、って』
『?!や、齋嘉、止めて!』


いきなり制服の前を引きちぎられ、ボタンが弾け飛ぶ。
の抵抗は全く効いてないらしく、は余裕で笑っている。

壁に押し付けられ、突然下腹部に痛みが走る。


『――っ?!』
『あ、切れた』


経験したことの無い、圧迫感と違和感。


『いっ……?!齋嘉、動かさないでっ!』
『まだ全部入ってないんだよ。それと誰か来るかもな?そんな大声上げたら』
『っ……う!』


の言葉には自分の口を塞ぐ。
そんなを見て、は満足そうに微笑んだ。


『……?』
『気分はどう?』
『齋嘉……っ!』


教室の床に寝ている自分と、隣で煙草を吸っているを見つけ、は記憶を取り戻す。
の目に怯えが浮かんでいるのを見て、は優しい笑顔での髪を撫でた。


『このこと誰にもばらされたくないよな……?』
『……っ!』
『選択肢はただ一つ、俺の玩具になること』


の綺麗な笑みに、はもう逃げられないのだと悟る。


『今度はちゃんと気持ちよくしてやるな……』
『……ん……』


何故、逃げられなかったのだろう。
そう考えることを、はもう止めるしかなかった。


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